これから超高齢化社会を迎える日本で、切っても切り離せないのが「バリアフリー住宅」。
しかし、お家全体のバリアフリーをするとなると、どうしても大きな費用がかかってしまうというもの。
そんな時に、すこしでもご高齢者の方に負担が少ないお部屋にする方法がありますので、紹介したいと思います。
まずはシニアの生活のなかで重要な動線を考える
仕事上で高齢者のいらっしゃるお家の手すりの付け位置や家具選び、配置などご相談に乗る機会があるのですが、いつも意識しているのは「使う方の動線を考えてアドバイスする」ということです。
特に考えるべきは、寝室からトイレまでの動線や、キッチンへの動線。
夜中にのどが渇いても、キッチンまでの動線が歩きにくいとお水を控えてしまったり、お手洗いまで遠いと我慢してしまったり、生活の中で1番控えるべきでないところをおろそかにしてしまいます。
歩くのが不安なばかりに高齢のご家族が座りっきりになってしまうのも考えものです。
この動線をきちんと確保するということが、バリアフリーへの第1歩です。
工事は不要!家具の配置を変えるだけで歩きやすく
では、この動線をより歩きやすくするために出来ることというのはなんでしょうか?
実は、そんなときに案外役に立つのが「どっしりした重い家具」なのです。
お年寄りの方が怖いのが、「つかまる物が何も無い状態」です。
リビングを抜けてトイレに行くときに、ちょっとソファや大き目のサイドボードに手を伝わせることができれば…まだ常時杖を必要としない程度の方であれば、十分安定して歩くことができます(もちろん、全体重をのしっと載せてしまわないことが前提ですよ)。
また、家具の配置を大胆に変えるようにお願いすることもあります。
動線に手すりがないと危険です。
寝室を出て、リビングを通り、キッチンをまわってやっとトイレに行きつける…そんな配置のお宅がありました。
70代と90代のお二人暮らしでしたが、さすがにこれは如何ともし難いでしょう。
案の定というか、心配していた通り、夜中にトイレに起きて途中で転んでしまった、と話されました。
しかし、手すりを付けさせて頂こうにも襖で仕切られたお部屋で壁が少ないので、ほとんどつけるところがないのです。
家具の配置換えでバリアフリーに
かろうじてトイレの中とドアのそばに手すりを付けましたが、お部屋からトイレまでの動線は家具を総動員しました。
幸い、どっしりとしたソファのセットお持ちでしたので、お二人が90度の角度でお座りになるように配置を変え、大きなリビングボードを襖の際のぎりぎり通れるところに移動、冷蔵庫をリビングと台所の中間に配置。
何とかキッチンを通過するまでは家具を伝って歩いていけるようになりました。
こんなに家具を滅茶苦茶に動かしてしまったらお気の毒かなあ…と思っていたのですが、意外なことに、こじんまりと近くに座って過ごせるようになり、動きやすくなっただけでなく二人で話すことが増えた、と仰ったのでした。
このように、家の中を大きく施工したり、引っ越したりすることをしなくても出来るバリアフリーの方法がありますので、まずは、家のなかを見渡して動線を意識し、どうしたら歩きやすくなるか?を考えてみるのが良いでしょう。
最終更新日:2013年10月28日